M-1グランプリ2020 感想(前編)

M-1グランプリ2020、最高でした。

ずっと好きだったマヂカルラブリーの優勝という時点で最高。

PVでの野田の「嫌なことあったまま終われないでしょ」が、マヂラブの境遇だけでなく、コロナ禍に沈んだ今年の日本社会も象徴しているようで素晴らしかった。

運営スタッフにも、芸人にもただただ感謝しかない。

 

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PVといえば、本番開始時に流れたVTRの芸人たちがマスクを外すところも最高。

 

今年は予選動画にプラスして、初めて準決勝のライブビューイングにも行ったので、ネタの調整がどのように行われていくかが見られたのも収穫だった。舞台に立てなかったり、無観客だったりの辛い状況の中でこれだけ調整していくプロは流石だなと思う。コロナの唯一良かった点はお笑いライブの配信が広まったこと。なかなかライブを観に行くのは難しいので、家でライブを観れることはありがたい。

今年の賞レース優勝者(R-1野田、KOCジャルジャル、M-1マヂラブ)を観てみると、若い頃からひたすらネタをやりまくって我が道を進んでいるタイプが逆境には強いみたい。野田もジャルジャルも呑む、打つ、買うとかしないでネタだけに没頭している一種の狂気とストイックさがあるので憧れる。今後もネタをやり続けてほしい。野田クリスタル粗品三冠王争いも今後のお笑い界を見ていく上での楽しみ。

 

【敗者復活戦】

とりあえず、敗者復活戦の感想から。まず、抽選会でのMVPは何といってもランジャタイ。箱ごと抽選するキュウ、番号を隠す金属バットと来て、ナンチャンを引くランジャタイでこの日最初の爆笑が起きた。敗者復活順位は最下位だったけど、その後の「国民最低~」も合わせて平場の優勝者はランジャタイ。

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① 金属バット

 まさかのトップバッター。今年は敗者復活あるのではと期待していたので少し残念だった。奇抜な見た目だが、正統派のしゃべくりでもはや安心感まである。準決勝ではややブラックすぎるオチが心配なネタだったが調整してきていた。もう後2年しかないので、一回は決勝にいってほしいコンビの筆頭。予選動画でプリクラやラジコンを観た時の衝撃をもう一度味わいたい。

 

② タイムキーパー

今年の準決勝進出者で唯一知らなかったコンビ。結成2年でこの技術と安定感は凄い。ネタ内容はベタ過ぎて表現力頼みなところがある。来年以降、「若手にしては上手い」の状態からの更なる進化に期待。

 

コウテイ

3年前ぐらいからずっと好きで、今年は決勝行くだろうと思っていたし、準決勝観た後もアキナよりコウテイだろうと思った。ダブルボケダブルツコミスタイルが板についてきて、勢いを残しつつ粗がなくなってきている。後は華がとんでもなくあるので、来年こそはストレートで決勝に上がって爆売れしてほしい。「ズィーヤ」が無いことにだけ物足りなさを感じたが、それを消してでもボケを詰め込んで勝ちに来ている本気度が伝わった。

 

④ カベポスター

まだ数本しかネタを観たことないがどのネタもシステマチックな発想が良いし、困惑したツッコミの感じがとても好み。敗者復活では票が入りにくいので、こういうタイプが決勝に上がるところも観てみたい。

 

⑤ インディアンス(決勝進出したため省略)

 

からし蓮根

最近、こういうシンプルなコント漫才には向かい風が吹いている気がする。二人のキャラクターや動きの面白さはあるけど、ボケの発想やワードではオズワルドに劣るし、動きや勢いではコウテイに劣るかなという印象。まだまだ若くて技術もあるし、去年の教習所のネタとかも好きなので、今後の覚醒に期待。

 

⑦ ぺこぱ

準決勝では別ネタをしていて、それが今自分たちが置かれている状況を皮肉ったようなネタだったので感動した。「俺たちは好感度タレントではなくて、漫才師なんだ」という矜持を感じた。「人を傷つけない笑い」「優しいツッコミ」みたいな他者からの批評を拒絶し、冷笑するような漫才で素晴らしかった。

それだけに、決勝にストレートで上がれずに、未完成なネタをかけることになったのは残念。結果的に、ウケてないのに票が入った人たちという悪いイメージがついてしまった。準決勝ネタはどこかで出してもらって、世間を刺してほしい。

 

⑧ ランジャタイ

ランジャタイはマヂカルラブリー以上に、笑いのハードルが高いなと感じる。野田の動き(シェフを殺しに行く、電車が揺れている)はキテレツだがルールは理解できるのに対し、国崎のルールは常人の理解を越えている。その理解できなさを笑えればハマって抜け出せなくなるが、テレビを通してだとやはり難しいのかな・・・。生で観たことあるかないかでだいぶ印象は変わると思う。ただ平場が最高だったので、深夜バラエティとかにジワジワ出ていってほしい。

 

滝音

「適当にしゃべんな!」とか「知ったかするなら当てにこい!!」は何度観ても笑ってしまう素晴らしい展開だが、ツギハギ感は否めない。秋定のボケ演技と台本がもう少し自然な感じになれば、さすけのツッコミがもっと映えるのかなとも思った。意外と、KOCの時みたいにコントの方が本筋がはっきりして向いている芸風なのかも。どちらにせよ今後も第一線で活躍するコンビだと思う。

 

⑩ キュウ

今まで見たキュウの中でベストパフォーマンスだったかも。芸風的に野外は不向きかと思ったけど、緩急の付け方とか次のボケを待ってしまう感じとか見る人を惹きつけるものがあった。最後の急にアツい展開も燃えたし、平場の長井秀和も面白かった。今回の「ゴリラであいうえお作文しそうだな?」もそうだし、準決勝のルパンのネタもそうだけど、声に出して言いたくなるフレーズが多い。

 

⑪ 学天即

今回唯一のラストイヤー。上手いし安定しているけど、正直この芸風は古臭く感じてしまう。ザマンザイの時にM-1があればなぁと悔やまれる。テレビ千鳥で呼ばれていたのは良かった。賞レースから解放されたので、制限時間とかにとらわれずに好きなネタをガンガン作って劇場で活躍してほしい。

 

⑫ ゆにばーす

マッチングアプリで出会うというのは男女コンビでしか出来ない良い題材を選んだなという感じ。様々な模索を感じる。ただゆにばーすに関しては、準決勝敗退後のムーブとかが一番芸人しているように見えるので、ガチガチに台本練るだけでなくて川瀬名人のナマのキャラクターや生き様をもっと漫才の中で観たい気もする。

 

 

⑬ ダイタク

早口で論理立ててキレたツッコミが入る感じに、囲碁将棋ぽさを感じた。今回とか去年の天丼的なネタよりも、推理小説みたいなガチガチのネタの方が好き。ただ東京ホテイソンが「難しい」と言われているのを見ると、今回みたいなタイプの方が良いのかな。

 

ロングコートダディ

自分が堂前と兎のキャラクターに完全にハマっているので、もはや何話していても面白く感じてしまう。兎のリアクション芸は唯一無二だと思う。もう少しバラエティとかに出てキャラクターが知られた方が有利に働く芸風だと思う。予選のテレビのネタも面白かった。ただ漫才としての爆発力には欠けるので、結果を残すならやはり本職のコントかな。

 

ニッポンの社長

CM前のネタ帳を見てのネタ合わせ、謎の「シャキーン」音、夕焼け小焼け、ブチ切れるケツ、ハケる辻。大トリで何か凄いものを見てしまった気がした。ランジャタイの配信でのあの瞬間にケツの経歴がリセットされたって話で爆笑した。KOCのケンタウロスも最高だったので、我が道を進み続けてほしい。

 

 

投票はコウテイ滝音、キュウに入れた。

実際のベスト3はインディアンス、ゆにばーす、ぺこぱ。

ぺこぱがあの出来で入ってしまうのは・・・。新M-1になってから決勝経験者しか復活していないので、そろそろオードリーみたいな未経験者の復活を見てみたいけど、今のシステムでは難しいのかなとも思う。

 

準決勝までくればテレビでネタを出来るので、来年は真空ジェシカ、シシガシラ、ダイヤモンド、令和ロマン、隣人、ももあたりに期待したい。

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