読書録(2021年1月)

読んだら読みっぱなしの日々を過ごしてきた。

しかし、それだと知識が定着しない。

いわゆる教養人と呼ばれるような人の本を読んでいると、次々に様々なジャンルの知識が繋がっていく様に圧巻される。

自分もそのようになりたいが、そのためにはまず読書を通して得た知識をリンクさせていく練習が必要だろうと思い、今月から読書録をつけ始める。

 

私の読書傾向としては、就職して以降は基本的に月15~25冊といった頻度で、教職という仕事の性質上、半分は授業準備のための読書となる。

現在は世界地理と日本近代史の授業を担当しているため、今年度はアジアやアフリカなどの地誌や国際情勢に関する本と、幕末~平成の歴史に関する本が多かった。来年度はおそらく前近代史を改めて学習することになると思う。

それ以外についてはなるべく知識の範囲を広げていきたいので、哲学、政治、経済、自然科学などの本を読んでいる。最近は特に社会問題などの本を意識的に読むようにしている。

まあ、授業のために読む本が趣味でもあり、趣味のために読む本が授業にも役立つのでその間に明確な境界線は引けないのだが・・・。

大学時代は小説も大量に読んでいたが、最近は月に一冊読む程度である。来年度は少し小説や漫画の量も増やしていきたいと思っている。

 

-読書-

読書の質・量どちらも向上していきたいと思っているので、普段あまり読まない読書術的な本を複数読んだ。

『サイエンス・ブック・トラベル』で理系本の知識をつけ、『〈問い〉の読書術』では実例とともに読書から「問い」を見つける術を学び、『僕らが毎日やっている最強の読み方』では幅広い知識を持つ二人がどのように情報・知識を得ているかを学んだ。

佐藤優のように月300冊は無理にしても、熟読する本(古典・哲学など)と速読する本(未開拓分野など)を分けて読書冊数を増やしていきたい。

 

-戦後-

授業準備のため、戦後史について多く学んだ。『日本占領史』から読み始め、『日米地位協定』、『自衛隊憲法』、『日本にとって沖縄とは何か』、『沖縄米軍基地全史』など、戦後日本の安全保障体制を特に中心的に学んだ。憲法9条、日米安保自衛隊、沖縄という要素がそれぞれ矛盾した面を持ちつつ共存しているのが戦後日本の特徴である。

一方の同盟相手であるアメリカについては、『地図で読むアメリカ』を読んでアメリカ国内の差異を学んだ。トランプからバイデンに交代した今、トランプ時代の総括的な本にも取り組んでいきたい。

また、『戦後「社会科学」の思想』では戦後民主主義大衆社会論、新左翼新保守主義/新自由主義などの国内外の思想の概説を、『文化復興1945年』では戦後すぐの芸能界の様子を、『60年代のリアル』ではデモや学生運動に参加した人々の分析を学んだ。新刊ばかりでなく、当時の本や映画や漫画などを鑑賞することが昭和史理解に繋がると思う。コロナ後の世界を考える上でも、当時の人々の生の声は役に立つだろう。

 

歴史関係の本の中でも、特に片山杜秀×佐藤優『平成史』は面白かった。細川内閣・暴対法・パチンコ規制を「反腐敗」でまとめたり、震災後の社会やLINEの普及を「刹那性」でまとめたりと、政治や文化など一見関係なさそうな事象が繋がっていく様が気持ちよかった。歴史を学んでいて一番面白いのはこういった繋がりに気づく瞬間であり、その繋がる事象同士が遠ければ遠いほど面白い。

そして、『平成史』を読んでいて特に気になったのが野中広務という政治家である。小泉政権が成立した際、野中政権になる可能性もあったという。魚住昭野中広務 差別と権力』では、地方政治家から50代後半で国政に進出して55年体制崩壊後の政界で辣腕をふるった野中を徹底的に取材している。

さらに戦後政治史については『自民党』、『田中角栄』、『対立軸の昭和史』、『公明党』を読んだことで、自民党社会党公明党のそれぞれがどのように変質していったかを捉えることが出来た。小泉から安倍に至る過程で田中角栄に代表される政治から変質して党員の同質化が進んだ自民党教条主義へのこだわりや自民党との連立などにより消滅に至った社会党、革新野党から連立与党へと立ち位置を変えた公明党。吉田以降の保守本流の役割を、自民党内の岸田派や、公明党、更には立憲民主党などの野党が果たしていくのかが今後の注目点である。

 

-原子力-

3.11から10年になろうとしているので、今までほぼ読んだことのない分野であるが挑戦した。國分功一郎原子力時代における哲学』が特に面白かった。原発反対の立場でありながら、原発を求める人々の精神を分析している一冊である。ハイデガーの読解が中心で難解そうだが、ストンと心に入ってくる文章。筆者の別作品も読んでみたくなった。

一方、日本のローカルな原子力問題としては原発建設を白紙化した窪川村に取材した『むらと原発』を読んだ。こちらも原発についてのみならず、日本の地域共同体についての論考としても面白かった。

原発問題は、グローバルな視点とローカルな視点、技術的な側面と倫理的な側面など、様々な視点を持つべき問題であると思うので、原子力に関する科学的記述や福島第一についての具体的記述も含めて、もう少し広く学習する必要のあるテーマである。3.11に向けて今月も読み進めていく。

 

-周縁-

先述した沖縄、部落(野中広務)、むら(原発)など、「周縁」的なものを扱う本を多く読んだ一か月であった。『「民都」大阪対「帝都」東京』がまさに「中心(近代国家)」と「周縁」の対立を扱っていて刺激的な一冊であった。『野中広務』の中で指摘されていたが、従来の学歴エリート的政治家とは異なる田中角栄も周縁的な人物である。こういった「周縁」からの視点は歴史を多面的に理解する際に必須のものである。

そして、そこには意識的にせよ無意識的にせよ差別がある。『「ユダヤ」の世界史』や『上野先生、フェミニズムについてゼロから教えてください』など、民族差別、性差別についても入り口程度の知識はつけることが出来た。まずは差別に気づくことが重要であると思うが、差別者に対抗できるだけの知識と論理は身に着けたい。黒人、LGBT、障害者など、知るべき対象は多い。

古典として読んだ柳田國男の『遠野物語』も、近代化の中での「周縁(山村の伝承)」をテーマにした研究として重要である。民俗学については昔から勉強したいと思いつつ出来ていないが、歴史学の知識がついた今こそ吸収しておきたい。現在の歴史観の相対化が可能であると思う。柳田について書いた『これを語りて日本人を戦慄せしめよ』で、柳田の具体的な論考や、弟子の折口についても述べられていたので、まずは代表作から読んでいくことにする。網野史学にも久々に挑戦したい。

 

 

その他、読書以外では鑑賞した漫画と映像も以下に載せておく。

★漫画

チェンソーマン』、『ファイアパンチ

久々に大ハマりした漫画家。映画愛が伝わる演出が魅力的。最終巻の発売が楽しみ。

 

★映画

 『人生、ここにあり!』、『スターリンの葬送狂騒曲』、『オールド・ボーイ』、『半世界』、『バーフバリ 伝説誕生』、『バーフバリ 王の帰還』、『1917 命をかけた伝令』、『1987、ある闘いの真実』、『ウインド・リバー』、『さよなら、人類』、『世界の中心で、愛をさけぶ』、『ザ・スクエア 思いやりの聖域』、『ブラックホーク・ダウン』、『ターミネーター2』(amazon primeで)

今までの視聴映画がアメリカ映画に偏っていたので、イタリア、韓国、インド、スウェーデンなどの映画も観てみた一方で、往年のヒット作も鑑賞。

 

★テレビ・ラジオ

『おもしろ荘』、『フットンダ』、『笑うラストフレーズ』、『ドリーム東西ネタ合戦』、『水曜日のダウンタウン』、『ゴッドタン』、『あちこちオードリー』、『有吉の壁』、『シンパイ賞』、『テレビ千鳥』(地上波で)

キングオブコント』【2009,2011,2012,2013,2014】(paraviで)

『相席食堂』、『千原ジュニアの座王』、『これ余談なんですけど・・・』、『千鳥×かまいたち』(TVerで)

『チャンスの時間』、『しくじり学園お笑い研究部』(Abemaで)

『100分de名著』【旧約聖書,遠野物語,谷崎潤一郎】、『揺れるアメリカ』、『永田町・権力の興亡』、『安全神話』、『メルトダウン』、『沖縄と核』、『映像の世紀』【第一集】(NHKオンデマンドで)

マヂカルラブリーオールナイトニッポン』(radikoで)

M-1でマヂラブ優勝、おもしろ荘でダイヤモンド優勝など嬉しすぎるお笑い界の動き。2018年の霜降り明星優勝以降、本格的にお笑いブームが再来している感じがするので、今年もたくさん面白いお笑い番組をやってほしい。今年はななまがりの躍進に期待。

 

その他、youtubeでお笑いや音楽など・・・

来月からはその都度記録しておいて、後から一か月にどれだけ観たかわかるようにしたい。