M-1グランプリ2020 感想(後編)

勝戦

去年、テレビ初出演がM-1だったミルクボーイがリムジンに乗って登場するというOPからして夢のある演出。

最初の演出がクドいという意見もあるが、お笑い好きにとってはどのシーンがVTRに使われるのかが楽しみなのでかなり好きな時間ではある。

 

① インディアンス

そろそろ来るかなと思っていた、敗者復活のトップバッター。

実際に来て見ると滅茶苦茶アツいし、復活の勢いのままトップを盛り上げてくれるのでかなり良い。

個人的にはインディアンスのようなボケ連打タイプのネタがあまり好みではないが、昨年のネタ飛ばしや、しくじり学園でのきむの号泣などを観ていたので、二人が楽しくテンポよく漫才をしているだけで嬉しく思った。

ただ、敗者復活と決勝で同じネタをするというのは、ワガママかもしれないが視聴者としては残念。せっかくならたくさんのネタを見せてほしい。(昨年の和牛も同様)

 

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東京ホテイソン

初めて予選で観た時から大好きなコンビ。

悲願の決勝進出だが、まだ20代半ばというとんでもないエリート。毎年、ホテイソンは限界かと言われながらハードルを越えて新しい型を見せてくるのは見事。

ただ、今回についてはその型の進化の最終形態をいきなり見せてしまったことが敗因か?

たけるの備中神楽ツッコミを知っているからこそ、最後の「無」の時間ではゲラゲラ笑ってしまった。

来年以降も更なる進化を見せてほしいコンビ。マヂラブの「最下位になっても優勝できる」が一番刺さっただろうなぁと思う。

 

③ ニューヨーク

ニューヨークの売りである「毒」が全面に出たネタ。

昨年の歌ネタよりも、嶋佐のうさんくさいキャラクターと、屋敷の偏見交じりのツッコミが上手くハマっていた。今までのニューヨークで一番好きなネタかもしれない。「古悪い」とかのワードがハマって気持ち良かった。

ただ、準決勝からの調整が裏目に出たのと、掛け合いが少しぎこちなくなってしまったのが残念。

youtubeチャンネルの動画や、バラエティなどで苦悩しつつ頑張っている姿を観ていたので、松っちゃんからの評価に少し感動した。そして今回の敗退コメント優勝者は屋敷の無表情。

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④ 見取り図

 正直なところ、準決勝の出来的に三年連続で決勝に上がるほどかなぁと思ってしまった。毎回スタイルを変えていってはいるが、今回については普通のコント漫才に殴り方の大喜利やワードボケをツギハギで入れたように感じてしまった。

最終決戦の出来も過去の見取り図からの進化があったかというと微妙で、マヂカルラブリーを叩くためにネットで「正統派」と言われているのも含めて、今回の進出は損の方が大きかった気がする。盛山のキャラクターが大好きなだけに残念な結果だった。今後の決勝進出はなかなか厳しくなったように思う。

 

⑤ おいでやすこが

練ったツッコミが主流となる現代漫才に真っ向から対抗する、シンプルストレート大声ツッコミ。打ち上げで大吾がボケ芸人はみんなツッコまれたいと言っていたが、本当に爽快感が凄い。一方で二本目については、みんなが期待していた小田のツッコミがやや弱めに感じた。

まあ正直、ユニットが優勝はなぁ・・・という気持ちもあったので、松本人志から評価されての二位はベストな終わり方かもしれない。コロナ禍でネタをかけられないコンビが多い中、ピンで培ったパワーとテクニックがバッチリはまった形。R-1におけるコンビ芸人の活躍や、ルール変更によるおじさん芸人の淘汰へのカウンターとしてとても良いストーリーだった。

 

マヂカルラブリー

事前VTR→正座での登場→笑わせたい人がいるのツカミ。全てが最高。3年前の絶望と、それに負けずに努力を積み重ねた結果で、感動すら覚えた。

最終決戦の「吊り革」は、ボケとツッコミが絶え間なく続くという一つの完成形だった。これが漫才ではないという批判が来ているのは悲しいが、新しいものというのはいつの時代も賛否両論になるんだろうな。革新的なネタが優勝し、漫才の裾野をさらに広げたという点では一つの転換点。

ネットのしょうもない意見は最悪だが、野田の対応が大人だし、他の芸人も愛のあるコメントをしていて良い。「これは漫才か?」という議論を呼び起こしたことは、今後の漫才の発展にとって意義があると思う。

 

⑦ オズワルド

ネタの構成、演技ともに昨年より進化していた。ボケとツッコミが全て心地よくハマっているし、台本の完成度はダントツだと思う。三連単では優勝も予想していた。

実際、松本と巨人の点数さえ伸びていれば最終決戦に進んでいたし、マヂラブを刺すことも可能ではあったと思う。

松本と巨人に真逆の講評をされていたが、伊藤の急に大声張り上げるところがあざといと捉えられてしまったのかもしれない。 

 

⑧ アキナ

準決勝でも「これが上がる?」と思ってしまったが、案の定スベってしまった。富澤のコメントに尽きる。おじさんがやるネタではない。

変わり種が多いから、安定を取るためにアキナと見取り図を上げたのかなと思うが、勇気をもってコウテイ滝音を関西芸人では上げてほしかった。

 

⑨ 錦鯉

満を持しての決勝進出。おじさんとおじさんがふざけあっているという面白さ。

ただ、出番順が後ろすぎたのが残念。おいでやすこが、マヂラブという「パワーとテクニックを兼ね備えたバカ」が先に出てしまったせいで、「シンプルなバカ」である錦鯉が相対的に弱く見えてしまった。

ただ、決勝後の番組出演オファーが大量にあったそうなので、バラエティでどんどん売れることに期待したい。

 

ウエストランド

キャッチコピーの「小市民怒涛の叫び」は最高。近年の傷つけない笑いの風潮への真っ向からの批判。爽快感すらある。

「復讐だよ?」をはじめとするキラーフレーズが全て良かったが、いくらなんでも河本が噛み噛み過ぎたので残念。

ニューヨークもそうだが、準決勝の方がパフォーマンスが良かったかな。そもそも毒のある芸風は決勝のきらびやかなセットと合わないというのもあると思う。

 

 

昨年のミルクボーイ、かまいたち、ぺこぱという最終決戦に比べるとどうしても凄みは少なく感じるが、全く違った三種が見れた点はとても面白かった。見取り図が「正統派」と呼ばれてしまうカオス感。マヂカルラブリーの優勝ネタについては歴史に名を刻んだネタだと思う。年末に放送するアナザーストーリーも楽しみ。

ただ、普段お笑いをあまり観ない人たちの保守的な批判意見があまりにも多かったことと、上沼巨人の引退示唆など、番組が終わりに向かってしまうのではないかという心配がある。これだけ楽しめるコンテンツは他にないので、本当にずっと続いてほしい・・・。